航空安全情報自発報告制度(VOICES)について

この制度の目的

航空活動に自発的(本人の意思による)に報告される航空の安全上の支障を及ぼす可能性があったと思われる事象(いわゆるヒヤリハット)を収集し、業務実施者間で情報を共有するとともに、その事象から航空の安全を阻害しうる要因を特定し、改善を提案することによって航空の安全向上に寄与することを目的としています。

報告を求める対象者

航空活動に自ら直接携わる個人またはその個人が所属する組織からの報告を収集します。
言いかえると、航空機の運航に関する、または航空機の運航を直接的に支援する活動に従事する関係者を指します。

この制度で取り扱う情報

例えば、人的エラーや安全阻害要因はあったが、不安全事象として顕在化しなかったヒヤリハット等の航空安全情報を取り扱います。
しかしながら、航空法や関連通達等で求められる義務報告対象事象に該当する事象や、航空活動に係る安全情報に該当しない情報は、VOICESでは取り扱いできません。

情報取り扱いの流れ

報告の受け付け

自発報告制度で取り扱いうる情報かどうか確認した上で、情報を受理します。受理することができない報告の場合は、ATECの分析を担当する者(以下「分析担当者」という)より連絡します。

分析担当者によるヒアリング

報告者から提供された情報に、その背景や要因など分析・分類等を行う上で必要な内容が不足している等、詳細を確認する必要がある場合、分析担当者より電話や電子メール等によりヒアリングを行うことがあります。

情報の秘匿化

分析担当者は、報告方法の手段に係わらずすべての報告に対して、個人又は会社等が特定される可能性のある情報を消去または伏せ字とする等、秘匿化を実施します。
報告が航空安全情報自発報告サイト以外の手段で提供された場合は、秘匿化実施後、分析担当者により当該サイトに代理登録します。その際、報告者ご自身にて、報告内容や分析状況等を当該サイトで閲覧するための「受付番号」と「パスワード」をお知らせします。なお、報告者ご自身が当該サイトに直接報告された場合、登録の際に取得した「受付番号」と「パスワード」をそのまま閲覧に使用して下さい。上記作業実施後、分析担当者は報告者へ連絡の上、ご提供いただいていたご連絡先等を抹消します。これ以降は、分析担当者から報告者本人への直接連絡はできなくなりますが、当該サイト上の連絡事項欄や分析結果欄を報告者本人が閲覧することは引き続き可能です。

分析作業およびフィードバック

報告された事象等を適切に評価分析するため、ATEC内で各業務分野に精通した担当者で構成される専門チームにより、民間航空の安全を阻害しうる要因を特定すべく予防的な観点から分析を実施します。
専門チームの分析結果は、業務分野別に設定する分析検討ワーキング・グループにて定期的に各分野の専門家から意見収集を行った後、学識経験者等で構成される分析委員会(年3回程度開催)にて、最終的な分析結果を取り纏め、必要な情報の発信を行います。
これらの発信された情報は、このVOICESポータルサイトにて刊行物を発行し周知します。
また自発報告制度の分析結果にもとづき、航空安全当局へは必要な報告や安全対策についての提言を行いますが、この場合も個人や会社名が特定される情報が提供されることはありません。
個々の報告の報告者へのフィードバックとして、報告者本人は航空安全情報自発報告サイト上にて、分析担当者が入力した個別情報の分析等の進捗状況を確認することができます。

VOICESの発足経緯について

国土交通省航空局では、国際民間航空条約第19附属書安全管理(SAFETY MANAGEMENT)の規定に従い、義務報告制度では捕捉しにくい、民間航空の安全に関する情報を幅広く収集するため、航空安全情報自発報告制度[略称:VOICES](VOluntary Information Contributory to Enhancement of the Safety)を平成26年7月10日より開始しました。
この制度の運営は、報告がなされた情報に基づく航空安全当局による不利益処分等への懸念を排除するため、航空安全当局者および主たる報告者以外の者が行うこととされていますが、この第三者機関として公益財団法人航空輸送技術研究センター(ATEC)が選定され、VOICESの運営を行っております。

ATECは、参加事業者間で情報を共有する、航空安全情報ネットワーク(ASI-NET)を1999年から実施してきました。VOICESの運用開始に伴いASI-NETは発展的解消といたしましたが、ASI-NETの経験を活かし、VOICESの充実を図っていきたいと考えています。

国土交通省航空局「航空安全プログラム」における自発報告制度の考え方

(航空安全プログラム第4章2.より)

  • 主たる報告者は、航空活動に自ら直接携わる個人又は当該個人が所属する組織とする。
  • 主たる報告対象事象は、航空活動を行う中で、自らが、当事者であるか否かにかかわらず、その五感により直接確認した(他人からの伝聞によるものは含まない)、航空の安全上の支障を及ぼす可能性があったと思われる事象とする。
  • 報告を受ける主体を確立し、その運営は、航空安全当局及び主たる報告者以外の者が行う。
  • 航空安全当局は、この制度において収集した情報のうち、個人、会社名等が特定される情報について、直接アクセスせず、運営主体に対し、当該情報の提供を求めない。また、仮に当該情報において違反があったことを知ったとしても、当該情報を不利益処分等の根拠として使用しない。